お寺からのメッセージ

2024

9長月

September

「無辺の生死いかんが能く断つ ただ禅那正思惟のみ有ってす」『般若心経秘鍵』

 

禅那とは心を静かにたもつこと、正思惟とは正しく考えることです。冒頭の文は、限りない生と死の苦しみを断ち切ることができるのは、落ち着いた心から生まれた智慧だけであるという意味です。

心が定まらず浮ついていては、良い判断はしづらいでしょう。私たちが失敗をするときはたいてい気持ちが焦っています。逆に心を静めていれば、問題の解決策が思いつきやすくなるかもしれません。単純な話ですが、心を整えるということについては、じっくり考える価値があると思います。

私たちの現状は私たちのひとつひとつの判断が積み重なりできあがっています。そのひとつひとつが良いものかどうかで一年後、五年後、十年後の姿が大きく変わることは想像に難くありません。心のあり方が自身の状況を左右するといえます。

どんなときでも落ち着いていられることは難しいことです。ただ、例えば一日に数分でも心をゆったりとさせる時間を作り、それを繰り返していけば、正思惟に近づけるのではないでしょうか。

 

長野支所 松尾寺 伊藤弘倫