2018 年
10月 神無月
October
「自宝を知らず、狂迷を覚と謂えり」
物置を整理していると簡素な作りながら、それでいてしっかりした古い机が出てきました。その昔、寺子屋で使っていた机です。
当時、その周りには子供達の無邪気な声が響いていたことでしょう。子供の頃に五感を通じて入って来たもの。仏様、お香の香り、正座、仲間と過ごしたかけがえのない時間。
誰しもが、かつて過ごした懐かしさに思いを馳せると、心ほのぼのと落ち着いてきます。
ところが、日常に目を向けるといつの頃からか、周りとの優劣に安心を求め、一歩出るために、その貪欲さは止まることを知りません。
自分の心の中に宝を持っていることを知らないで、間違った考えにも、これが通りと思ってしまいます。だからこそ「あの頃は」と想起するのかもしれませんが…
優劣ではなく、個性豊かに共に幸せを築き、一歩前ではなく、喜びを分かち合い、苦しみに寄り添う。
本来、心が豊かに、安らかになるための素晴らしい宝を持っています。
栃木 等持院 石川智道