お寺からのメッセージ

2025

8葉月

August

無病則無薬 有障則有教

入寺して数年が過ぎた頃、何もかも上手くいかないように思えて、お大師さまに恨み言をこぼしたことがありました。暮れ六つの鐘をつきながら「お大師さま、僕もう無理です!」と鐘 の音に紛れて大声で叫んでいたら、私のすぐ右後ろで「大丈夫、お前はよくやってるよ」という声が、いや私にだけ聞こえるメッセージがありました。

仏さまの優しさは、ただ甘やかすのではなく、私たちの成長を願うゆえの厳しさもあります。

「無病則無薬 有障則有教」(やまいなきときは すなわちくすりなし さわりあるときは すなわち おしえあり)              

『秘蔵宝鑰』  

薬は病を治すためのもので健康な人にはかえって毒になります。人生の困難にぶつかった時、もうダメだと諦めそうになった時、そんな時に恥も悔しさも捨て去り手を合わせると、不思議と仏さまの教えの智慧があなたに届きます。

 助けて!と手を上げるのは敗北じゃない。自分の限界を認め、助けを借りて立ち上がろうとする姿。お大師さまは、そんなあなたも大好きですよ。

東京 華嚴院 矢田弘雅