お寺からのメッセージ

2020

9長月

September

「阿字の子が阿字の古里立ち出でてまた立ち返る阿字の古里」

掃除をしていたら昔のアルバムが出てきた。写真に写っているのは、明治生まれのひいおばあちゃん。着物に割烹着でご婦人方に交じって参拝者に食事をふるまっている。幼い三人の子供を亡くし、悲しみに暮れている時、熱心に高野山へ参拝した。お大師様に導かれて多くの方々と共に信仰の輪を広げていく。

ひいおばあちゃんは何に救われるのか。推測することは難しいが次の御詠歌を思い出す。

阿字の子が阿字の古里立ち出でてまた立ち返る阿字の古里

全ての存在は、いのちの根源「大日如来」の元から生まれ、また「大日如来」の元へ帰っていく。

「元々いた場所にお還りになるのだから恐れることはありませんよ。ご安心してください。」とお大師様は仰っております。悲しみはなくなるわけではないが、仏さまの大きな輪の中にいて、共に生かされていると実感したのではないかと想像する。

周りに写っていた割烹着のご婦人方には会ったことはないけれど、その時代を支えてくださった。多くの方々の支えがあって、今の環境があることも思う。感謝をしながら日々に手を合わせたい。

もうすぐお彼岸を迎えます。ご先祖様はもちろん、お世話になった多くの方々に思いを馳せ、過ごしてみてはいかがでしょうか。そして小さな輪を大切に。

合掌

 

東京 真照寺 堀井 隆淳