2020 年
3月 弥生
March
「道端のお地蔵さま」
先日、お参りに来られた小学生の男の子に質問をされました。何故お地蔵さまは道端に立っているのかという、可愛らしくもよい質問でした。
地蔵菩薩が手に持つ錫杖には六つの輪がついています。六つの輪には、六波羅蜜や六道能化の誓願が込められています。六道能化とは、六つの世界全ての衆生を救い続ける誓願を持つ菩薩のことであります。
『延命地蔵菩薩経』の中で地蔵菩薩は、「私は諸々の地獄へ行って、衆生の苦を離れしめ、仏さまのいない世界の衆生を救う。私は六道に輪廻している全ての衆生が成仏したならば、仏となるのであって、一人でも残っていれば私は成仏しない。」と仰っています。二仏中間(にぶつちゅうげん)の菩薩とも呼ばれる地蔵菩薩はお釈迦さまがこの世を去られた後、弥勒菩薩が現れるまで、あらゆる境遇の人の苦しみ、たとえそれが地獄であろうと赴いて救い続ける菩薩さまなのです。
道端に立つ姿は、どんな片隅にある存在にも慈悲の手を差し伸べる菩薩行を表しているのです。暑い夏でも、寒い冬でも、道端に立ち尽くすお地蔵さまに手を合わせたいものです。
相模 宝生寺 堀江泰弘