2024 年
11月 霜月
November
「諸仏威護して一子の愛あり」
落語に『佃祭』という話がある。
神田にある小間物屋の主人が佃島住吉様の祭りに出かける。参拝を終えて見物をしてしまいに船で帰ろうとすると引き留める者がいる。
三年前、命を助けた娘がそこで所帯を持って暮らしていた。命の恩人を見つけて礼がしたいと袖を引いた。それが幸い、主人は乗れなかった船の沈没から免れる。「情けは人の為ならず」とは正にこの事。
一方、主人の家では、事故の知らせを聞いて葬式の準備が始まった。そうとは知らない主人、翌朝門口に貼られた忌中の札を見て留守中に母親が亡くなったかと後悔する。
けれども「信心をして帰るのにそんな馬鹿な話があるか」と思い直して帰宅する。お互いに誤解が解けていく。集まった町内の仲間とのやりとりがまた面白い。
諸仏威護して一子の愛あり(弘法大師 性霊集)
密教の戒を三昧耶戒(さんまやかい)という。身体と口と心を使って仏の子となって振舞えば、諸々の如来は必ず光臨影向して加持力で一人子のように守ってくださる。
その救いを見逃さないように、信心を発(おこ)して、日々正しい行いを保ちたい。
神奈川 寶塔院 山本昭弘